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食べ物や空気などを通して私たちの体内に蓄積され、さまざまな病気の誘因や要因になっている事実を、可能なかぎり科学的、実証的に示してくれたのです。
もちろんその事実を指摘したのは、テオ女史らが最初ではありません。
テオ女史が指摘するよりもずっと以前から問題になっていました。
すでにョ−ロッパのいくつかの国では、ダイオキシンをはじめとするさまざまな合成化学物質の危険性を重く受けとめ、国をあげて対策を講じています。
アメリカでも一○年以上も前からダイオキシンに注目し、環境や健康への影響を調べたり、汚染地の浄化法、汚染の防止法などを内容とする「ダイオキシン戦略」が報告されていました。
しかし事実を広く国民に知らせる努力を怠っていたようです。
そのことにテオ女史らは異議を申し立て、被害の状況、そのメカニズムなどを解き明かしたのです。
「このままでは、アメリカはとりかえしのつかない状況になる。
いや、このままでは私たちの未来が奪われてしまう」と。
日本では、どうでしょうか。
日本でも何年も前から、いや、何十年も前から、一部の先駆的な科学者のあいだで問題になっていました。
ダイオキシンやPCBの恐さを指摘する著作がいくつも出版されていますが、なぜか国民のあいだで広く議論されることはなかったのです。
おそらく、そうした物質による汚染が、特殊な地域、自分たちとは関係のない地域の問題だと思っていたからでしょう。
それが自分の隣の、いや、自分や自分の家族の問題であると、多くの人が思ってもみなかったのです。
ところがハッと気がついたら、私たちはその汚染の真っ只中にたたずんでいたというわけです。
私たちはダイオキシン汚染のもとである、有機塩素系の化合物に囲まれて暮らしている各種のプラスチック容器、塩ビパイプ、ビニールテープ……。
それらを燃やして出る、もっとも猛毒といわれるダイオキシンを含む土地で子どもたちを遊ばせ、その土地でとれた野菜を食べ、その土地を通る水を飲み、ダイオキシンを含んだ空気を吸いこんでいるのです。
それがいまの私たちの状況です。
アトピー性皮層炎は、ここ二十数年で急激に増えた現代病です。
その原因については、遺伝的要素と環境的要素の相互作用とされてきました。
しかしその症状や発生状況を調べてみると、背景にダイオキシンの存在が見えてきたのです。
厚生省の児童家庭局が平成四年度に発表した「アトピー性疾患実態調査報告書」をもとに、人工乳保育と母乳保育との発症率を比較したものです。
これを見ると、ちょっと驚かれたことでしょう。
世界保健機関(WHO)などでは、「子どもは母乳で育てましょう」とさかんに指導していますが、そうするとアトピー性皮膚炎の母乳保育ほどアトピー性皮膚炎の発症率が高いことになります。
そして母乳に含まれる危険な化学物質のなかで、いちばん危険度の高い物質がダイオキシンであり、人工乳のダイオキシン濃度は母乳の一○%ほどしかないことがわかっています。
言葉をかえていえば、母乳は人工乳の一○倍ものダイオキシンを含んでいるということです。
厚生省の統計では、三歳児の三一・ニ%、つまり子ども三人に一人にアトピー性皮層炎の既往歴があるというのです。
それもここ三○年間に急上九州大学医療短期大学部のN助教授の調査によれば、日本人の母乳中のダイオキシン類の濃度は、最低値が○・五六ppt(pptは一兆分の一の単位)、最高値が二・八ニppt、全体の平均値が一・五ニpptです。
そのような母乳を飲んだ赤ちゃんは、無事に育つのでしょうか。
アカゲザルなどの実験動物を使って実験したところ、ダイオキシンが免疫系を狂わし、生殖障害などを起こすことが確認されています。
ごく微量のダイオキシンを混入したエサをアカゲザルに与え続けると、子宮内膜症を起こしたり、皮層疾患などの病気を起こしています。
ただ、その皮層疾患がアトピー性皮膚炎であるかどうかはわかっていません。
実験に用いたアカゲザルの遺伝子は、人間とは九五%以上も同じだといいます。
ちがうのは脳の部分くらいですから、ほぼ人間の体に近いといってもいいでしょう。
人間とよく似た体質を持つアカゲザルに、このような症状があらわれるのですから、人間でも同様の症状が出るのではないかと考えられます。
栄養の面からいっても、子どもの免疫力の形成からいっても、母乳は赤ちゃんにとって最高の食べものです。
さらに授乳は、母子のスキンシップ・コミュニケーションにとって不可欠です。
ところがよかれと思って与えていた母乳が、アトピー性皮層炎の要因になっていたとすれば、じつに悲しむべきことだといわざるをえません。
これこそダイオキシン汚染の最も恐ろしい点です。
汚染されたつもりがないのに、いつの間にか汚染されているのです。
ダイオキシンは自然界においては分解しにくく、減衰期が長いのが特徴です。
しかも食物連鎖によって順次濃縮されていくので、魚や肉、野菜などをとっている人間の体に最終的に集約されていきます。
なかでも赤ちゃんは、汚染の頂点にあります。
親の精子や卵子、胎盤や母乳を介してダイオキシンが伝わり、それを蓄積して育っているからです。
私たちがアトピー性皮層炎はダイオキシンによるものではないかと考えたのは、このデータを見たからです。
アトピー性皮層炎の大きな要因は、環境と遺伝的要素だといわれています。
親から受けついだアトピー体質が、環境の刺激によって発現するというのです。
だとするとアトピー体質というのは、体の免疫システムに、ある種の異常が生じている状態と考えられないでしょうか。
親から受けついだ遺伝子や染色体に奇形や障害を生じることで免疫障害を起こし、母乳などからの汚染物質による追い打ちで発症するのではないだろうかということです。
その感作システムが巧みで、微妙であるために、ダイオキシン類がアトピー性皮層炎の要因であることを証明するのが難しく、そのためダイオキシン類がアトピー性皮膚炎と関係があるという推察すら行なわれなかったといってもいいでしょう。
医学界においては依然として、「アトピー性皮層炎の直接的な原因は不明」とされ、ダイオキシン類との関連を取り沙汰されることもありません。
しかしアトピー性皮膚炎は免疫系の病気であり、その免疫系がダイオキシン類によって変化した結果ではないかと考えられないでしょうか。
もちろんダイオキシン類だけの作用ではないでしょう。
食品添加物や保存料、着色料などが微妙に影響し合った複合汚染であることはいうまでもありません。
国もそのことについて言及していませんが、それにしてもわが国では、ダイオキシン類による被害への対応が遅れています。
スウェーデンやドイツなどは、すでにダイオキシン類の害を認め、摂取・排出許容量を設定し、汚染物質を出さない社会的な工夫と制限を積極的に講じています。
それに対してわが国は、一九九六年度にいたるまで、ダイオキシンの許容量が欧米諸国の基準量の一○〜二○倍という水準でした。
一九九七年になって、ようやく欧米並みの基準値に改善されたものの、法的拘束力のない「暫定基準」のままです。
ダイオキシンは遺伝子や染色体に影響をおよぼす?ダイオキシン類によって引き起こされる病気や体の異常をあげれば、枚挙にいとまがありません。
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